ゴマの伝播

ゴマはもともと、アフリカのサバンナ地帯で生まれた植物です。サバンナ地帯とは、アフリカ大陸の赤道より少し北に位置する一帯で、熱帯雨林と砂漠にはさまれたところです。雨季と乾季がはっきりしており、乾季には砂漠なみに乾燥する気候が特徴です。ゴマが乾燥に強い植物であるのは、この生まれの土地の気候ゆえなのです。現在の国でいうと、エチオピア、スーダン、ニジェール、ナイジェリアあたりです。これらサバンナ周辺地域では、現在でもゴマの生産大国が多いです。数千年前、このアフリカから、ゴマは世界に広がっていきました。紀元前4000年頃にはエジプトで、同3000年頃にはすでに中国でゴマが栽培されていた事を示す資料が発掘されています。アフリカからゴマが伝播していった経路は大きく二つに分かれ、一つは、中近東、中央アジアを経由して中国に至るものです。もう一つは、海路でインドに渡ったものです。前者は、茎が1本の温帯型といわれるゴマが中心で、後者は茎が何本にも枝分かれする熱帯型というゴマが渡っていきました。日本にあるゴマは温帯型で、中国から伝わってきたと考えられています。この温帯型が伝わっていった経路は、シルクロードになぞらえてセサミンロードと呼ばれています。なお、アメリカ大陸にゴマが伝わったのはかなりあとのことで、17世紀の奴隷貿易のときです。その後、特に中南米で定着し、現在パラグアイやグアテマラ、メキシコなどで広く生産されています。


胡麻の名前の由来

かつて中国では、西側、つまり中央アジア、現在のイランあたりがその中心になりますが、そのあたりの異民族を「胡」と呼んでいました。そのため、シルクロードを通じて西から伝わってきた文化の多くには「胡」の文字が使われています。例えば、胡坐(あぐら)、胡椒(こしょう)、胡瓜(きゅうり)などの食材がそうです。そして、胡麻(ゴマ)もその一つです。胡麻の実が麻の実に似ていたために、「胡」の国の「麻」という意味から「胡麻」と呼ばれるようになったということです。なお、ゴマの発祥の地に近いアフリカ・ナイジェリアのベネ川流域では、ゴマ栽培が非常にさかんで、そのためアフリカ西部一帯では、ゴマのことを「ベネ」と呼ぶようになりました。奴隷貿易に伴ってアフリカからゴマがアメリカに持ち込まれたときにも、この呼び名は継承されました。アメリカ南部サウスカロライナ州やジョージア州に住むアフリカ系アメリカ人の間では、今でもゴマのことを「ベネ」と呼ぶ人たちがいます。